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サマータイムの代替案

現在、我が国では、資源問題と環境問題の解決策の一つとして、サマータイムの導入が検討されている。2005年2月22日に、サマータイム制度推進議員連盟が活動を再開し、中央環境審議会地球環境部会は、地球温暖化対策の一環として、サマータイムの導入を提言している。しかし、私はサマータイムには反対だ。代替案として、固定型デイライト・セイビング・タイムを提唱する。

1. サマータイムとは何か

サマータイムは、海外ではデイライト・セイビング・タイムと呼ばれることがある。太陽光(デイライト)を節約(セイブ)しようという時間(タイム)の制度という意味だ。1784年にアメリカ人のベンジャミン・フランクリンによって、ろうそくの節約方法として提唱されたことに始まるとも言われている。具体的には、日の出時刻が早まる時期(例えば4~10月)には、時計の針を1時間進め、夕方の明るい時間を増やし、日の出から1日の活動開始まで太陽光を有効活用できない時間を減らす制度である。原油換算で年間約93万キロリットル、温室効果ガス約40万トンを削減できるという試算もある。

夏至における日の出の時間は、日本でも地域によって異なり、午前3時半~5時半となっている。これに対して、国民の約8割の起床時間は午前6時以降で、日の出と共に外が明るくなっているにもかかわらず、カーテン等を閉めて部屋の中を暗くして寝ているのが一般的である。デイライト・セイビング・タイム制度を導入すれば、日の出時刻が1時間遅くなるため、こうした起床前に有効活用できていない時間を短くすることが可能となり、日没が1時間遅くなった分、照明の点灯時間を1時間短くすることが可能になる。これがデイライト・セイビング・タイム制度の狙いである。

デイライト・セイビング・タイム制度は、世界70か国以上で導入されており、経済協力開発機構(OECD)加盟二九か国の中では、日本、韓国、アイスランド以外のすべての国において実施されている。なお、アイスランドでは、白夜になるため、デイライト・セイビング・タイムを導入する必要がない。実施していない国は、主として赤道直下のアジア、アフリカの国々であり、これは、一年中、日中時間に変化がないことが主な理由である。

日本でも、戦後、石炭事情の悪化、電力不足の深刻化を背景として、GHQの指示により、サマータイム制度が昭和23年から導入された。法制定目的は、国民の健康福祉の増進、重要資源の節約、国民の時間観念を養うこととの説明が行われたが、サマータイム制度の導入について、国民的な議論が行われなかったばかりか、法律が制定された日のわずか3日後の5月1日から制度が実施されたため、多くの国民に戸惑いを与えることになった。

昭和26年9月にサンフランシスコ講和条約が調印された後、サマータイム制度についても継続すべきかどうか検討が行われた。昭和26年9月下旬から10月中旬までの間、総理府国立世論調査所において実施された世論調査の結果は、サマータイムをやめた方がよいとする者が53%、続けた方がよいとする者が30%となり、廃止を支持する意見が過半数となった。戦後のサマータイム制度は、こうした国民の半数以上の者から反対され不評である旨の世論調査結果や電力事情の改善などを背景に廃止されることになった。GHQが廃止されたのと同じ昭和27年4月のことである。

その後、二酸化炭素排出量を削減するための政策の一環として、再び日本でも脚光を浴びるようになった。サマータイム制度推進議員連盟は、96年と99年にも、法案提出を目指したが、反対は根強く、失敗している。

2. 固定型デイライト・セイビング・タイムの提案

サマータイム制度は非常に評判が悪いし、私も反対だが、太陽光の有効活用が、資源問題および環境問題を解決する上で重要であることは確かである。太陽光は、地球の生物にとって最も重要なエネルギーの源泉である。太陽光のエネルギー量は膨大で、日本が一年間に消費する石油3億リットル近くのエネルギーも、1年間に日本の平地に降り注ぐ太陽エネルギーの4%分にすぎない。太陽エネルギーを利用するために太陽電池が開発された。だが、光エネルギーを電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーを光エネルギーに換えると、変換効率は1%未満になってしまう。太陽光の最も効率の良い利用方法は、光として直接利用することである。

近代以前の人々は、日の出前に起床し、太陽光を十分に利用した。ところが、照明器具の普及とともに、次第に起床時間が遅くなり、人々は太陽光の直接利用を疎かにするようになった。もし午前3時に起床し、午後7時に就寝するならば、夏至の時でも太陽光を無駄にしない生活を送ることができる。ところが、朝7時に起床し、9時から5時まで働いて、夜11時前後に就寝するというのが先進国の平均的な生活となってしまった。このため人々の活動時間帯が日照時間帯に比べて後ろに大きくずれ、その分太陽光エネルギーが無駄になっている。

サマータイム制度では、年に二回も時刻変更をしなければならないので、デメリットがあまりにも大きすぎる。では、時刻を一度だけ変える、「恒久的サマータイム」制度はどうだろうか。「恒久的サマータイム」というのは、形容矛盾なので、「固定型デイライト・セイビング・タイム」という名前をつけることにしよう。具体的には、日本の標準時間を、隣接するロシア領の樺太・千島と同じ時間に合わせて2時間前に進めようという提案である。そうすれば朝7時に起きていた人は、今の時間で、5時に起きるようになる。人間の活動時間と日照時間が大きく重なってくる。当然今後太陽光を利用するパッシブ・ソーラーを取り入れた建築物が増えることになるであろう。標準時間の変更の時期は、ゴールデンウィークの深夜が適切である。休日なので社会的混乱が少ないし、夏至が近づくので夜明けも早くなる。

3. なぜサマータイムよりも優れているのか

一般にある政策が望ましいか否かは、その政策の実行がもたらすプラスの効果がマイナスの効果を上回るかどうかによって決まる。ここでは議論を分かりやすくするために、デイライト・セイビング・タイムのプラス効果の代表格である「一時間あたりの年間省エネ効果」とマイナス効果の代表格である時刻調節のための社会的コストだけを取り上げ、両者をそれぞれxとyとしよう。

サマータイムを実施するかどうかは、

n(x-2y) …(1)

がプラスになるかどうかにかかっている(nは実施年数)。これに対して、固定型のデイライト・セイビング・タイムを採用するかどうかは、

2nx-y …(2)

がプラスになるかどうかにかかっている。(2)では、(1)と異なって、yにnが乗ぜられていないので、仮にxが試算を下回る小さな値であっても、nの値を十分大きくすることによって(それはたんなる惰性によって可能)、(2)はたちどころにプラスに転じることができる。しかし、(1)の場合は、実際にやってみなければわからない。

固定型のデイライト・セイビング・タイム制の場合、人々の活動時間が再び後方にずれることのないように、公的機関がタイム・スケジュールを変更しないように努力する必要がある。企業も経費削減につながる新しい時間を堅持するであろう。

読書案内
書名 Spring Forward: The Annual Madness Of Daylight Saving Time
媒体 ハードカバー
著者 Michael Downing
出版社と出版時期 Shoemaker & Hoard, 2005/04/30
追記

2008年6月9日に、福田首相は、地球温暖化対策の一環としてサマータイム制度の導入を発表した。しかし、同時に、夏時間への切り替えが、睡眠障害を増やすことで、大きな損失をもたらすことが懸念されている。

温暖化対策として導入論議が進むサマータイム(夏時間)制度について、不眠症治療に取り組む医師らでつくる日本睡眠学会は5日、健康に悪影響を与える可能性があるなどとして導入に反対する声明を発表した。医療需要の増加などで逆にエネルギー消費が増える可能性も指摘する。  

学会によると、制度を導入した欧米では健康被害が多数報告されており、夏時間への変更後、数日から2週間程度は睡眠時間が減少。日本人は欧米より平均睡眠時間が約1時間短いため影響は大きく、暑さが収まらない時間に床に就けば、寝付けずに不眠を誘発する可能性もあるという。

睡眠障害による医療費増加や作業能率の低下などによる国内の経済損失は年3.5兆円にのぼるとの試算があるという。サマータイム導入で睡眠障害になる人が増えれば、経済損失はさらに年1200億円増えると見積もっている。

[朝日新聞(2008年6月5日18時10分)「サマータイムは健康に悪影響」睡眠学会が声明]

現在のエアコンには、タイマーがついているので、暑さが原因で、不眠になるということはない。また、暑い時には、どのみちエアコンをつけるから、電気の消費量が増えるというわけでもない。但し、一年に2回も睡眠時間の変更を余儀なくされると、睡眠障害が増えるということは十分予測できる。この点からしても、固定型のデイライト・セイビング・タイム制の方が優れていると思う。

[投稿者:Nagai Tosiya|コメント:0個|この記事をYahoo!ブックマークに登録する この記事を含むlivedoorクリップ この記事をFC2ブックマークに登録する この記事をニフティクリップに登録する この記事を含むはてなブックマーク この記事のはてなブックマーク数
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