最新編論文編書籍編総記編

沙漠化の根本的原因は何か

現在、地球では、毎年600万ヘクタールもの土地が沙漠になっているという。地球の沙漠化の根本的な原因は何か。沙漠化を阻止するにはどうすればよいのか。赤木祥彦が『沙漠化とその対策―乾燥地帯の環境問題』で挙げている諸原因を整理しながら、考えよう。

1. 沙漠化の原因は何か

赤木は、沙漠化の原因として、直接土地に働きかえる誘因と、その誘引に圧力をかける素因を区別し、誘因として、

  1. 過伐採
  2. 過放牧
  3. 過耕作
  4. 表層細粒物の移動
  5. 塩害

の五つを挙げ、素因として

  1. 干ばつ
  2. 人口過剰
  3. 経済・政治政策の失敗

の三つを挙げている。

赤木がやるように、雑多な原因を列挙しても沙漠化の本質はつかめない。各事象がどのような因果関係でつながっているのかを把握しなければならない。そのためにも、根本的原因と副次的原因の区別が必要である。

2. 沙漠化の副次的原因

2.1. 干ばつ

まず、赤木が素因の一つとして挙げている干ばつは、本当に根本的な原因なのかを疑わなければならない。干ばつが起きるから沙漠化が起きるというよりも、沙漠化が起きるから干ばつが起きるのではないか。

植物は、地中の水分を空中に蒸散する。そして、空中に放出された水蒸気が、雨となって、地面に戻ってくる。河川・湖沼・海洋の近くでは、直接水面から水が蒸発するが、これらから遠く離れた内陸部では、植物が、水の循環の主役である。したがって、植物が消滅する沙漠化が干ばつの原因になっていると考えることができる。

2.2. 表層細粒物の移動

次に、表層細粒物の移動であるが、これは、赤木の説明によると、水食や風食による土壌流出や砂丘の移動のことである。これらも、砂漠化を加速させる副次的要因であって、砂漠化の根本的な原因ではない。

水食による土壌の失亡量は、過放牧による裸地では146.2トン/ヘクタールであるが、放牧されたことのない疎林地では、0トン/ヘクタールである。ここからわかるように、植被が後退すると、水食により土壌が流出し、それによって、さらに植被が後退するという悪循環が生じる。風食についても同じことが言える。

砂丘が移動しても、それによって砂漠が無制限に拡張されることはない。植生が健全なら、移動してきた砂を有機土壌化することもできる。また、砂丘の移動は、必ずしも自然現象ではなく、家畜が同じルートを歩いて、踏み分け道を形成することで、土壌構造が破壊され、砂丘の移動が起きることもある [赤木 祥彦:沙漠化とその対策―乾燥地帯の環境問題, p.155-156]。

2.3. 塩害

塩害は、沙漠化の原因というよりも、沙漠化を阻止しようとする灌漑の失敗例として知られている。

ほとんどの堆積岩は、海底堆積物が固化したものであるから、塩類が含まれているものであるが、水系に近い堆積岩では、塩類は雨水によって洗脱される。ところが、水系から遠く離れた内陸の乾燥地帯では、塩類が洗脱されることなく、盆状の基盤に残留している。

そういう乾燥地帯で、灌漑を行い、大量の水を散布すると、灌漑用水は、いったんは土壌中の塩類を溶かしながら下方へと浸透するが、やがて毛管現象により上昇し、地表面にまで来ると、水分が蒸発するので、塩類だけが残る。そして、地表面に塩類が残留すると、強い浸透圧により、植物は根から水を吸収できなくなり、枯れてしまう。これが塩害である。

3. 沙漠化の根本的原因

砂漠化の直接的原因の中で最も大きな役割を果たしているのが、過放牧(34.5%)、その次は、過伐採(29.5%)、その次は過耕作(28.1%)である [UNEP: Status of Desertification and Implementation of the United Nations Plan of Action to Combat Desertification, 1991, p.25]。過放牧がもっとも主要な原因であるのは、沙漠化直前の土地では放牧ぐらいしかできないためと考えることもできる。実際には、森林→過伐採→畑→過耕作→草原→過放牧→沙漠という経過をたどっている場合もあるだろう。

過伐採にせよ、過耕作にせよ、過放牧にせよ、その原因は、人口増加にある。そして、人口増加の原因は近代資本主義にある。因果関係をまとめると、次のような図になる。

赤木は、「経済・政治政策の失敗」として、社会主義的あるいは開発独裁的な政府の失敗とアメリカの沙漠化に見られる市場の失敗を挙げているが、どちらも近代資本主義的な拡大再生産によって植物から過剰に資源を奪った結果である。。

私は、資本増殖のオートポイエーシスという点で、社会主義経済と市場経済(狭義の資本主義経済)との間には違いがないと主張した。

社会主義(共産主義)と資本主義との違いは、市場経済を認めるか否かにあるのだが、語源的観点からすれば、資本主義的経済が市場原理に基づかなければならない必然性はない。近代は総じて資本主義の時代であったのであり、市場経済も社会主義経済も、特権階級が富を蕩尽して、生産力を増大させようとはしなかった前近代社会とは異なるという意味で同じ近代資本主義経済なのである。

[論文編:資本とは何か]

システムは、環境にエントロピーを捨てることで自らを維持している。したがって、人間システムが増大すればするほど、環境におけるエントロピーが増大し、他の生物が存続するための低エントロピー資源が少なくなる。地球の沙漠化の問題の本質もここにある。

4. 短期的対策と長期的対策

2005年9月に設立された緑化知的権利有限責任事業組合は、納豆樹脂を使った砂漠の緑化を企画している。納豆樹脂は、原敏夫九州大学助教授が開発した高吸水性ポリマーで、納豆の糸に電子線を当てて作る。納豆樹脂は、自重5000倍の水を吸収し、生分解性を持つので、これを肥料に混ぜて使うと、少ない灌漑用水で、つまり塩害を惹き起こすことなく、かつ土壌を汚染せずに、農業や植林ができる。

納豆樹脂は、製造コストが高すぎて、灌漑用には直接使えないが、その高い吸水性と生分解性ゆえに、紙おむつなどにも使うことができるので、使用済み紙おむつの再利用という形で砂漠緑化に役立てることならできる。納豆樹脂入りの使用済み紙おむつは、肥料(糞尿)付き、水付きなので、灌漑用肥料としてそのまま使うことができる。

緑化知的権利有限責任事業組合は、近年の原油高で財政が潤っている中東の原油国で、このプロジェクトを始め、納豆樹脂を大量生産する予定である。大量生産で価格が下がれば、他のより貧しい地域の沙漠の緑化にも使うことができる。

もっと安くすませる方法として、草炭を使う手がある。

草炭とはピートとも呼ばれ、水生植物の枯死したものが長い年月の間に水中に堆積し、炭化しかかったものをいいます。北海道や北欧、カナダなど北半球の寒い地方に分布し、推定埋蔵量は700億トンともいわれています。

草炭は酸性であり、アルカリ性の沙漠土を中性化するのに役立ちます。また保水性、通気性もあり、肥料としても効果があります。石炭よりも埋蔵量が多く、輸送費を除きコストは著しく低いことから、今後の活用が有望視されています。

地球の砂漠化をもっと根本的に阻止するには、人口増加を阻止しなければならない。そのためには、日本で行われているように、世界中で教育負荷を高め、晩婚化と少子化を促進させなければならない。資本集約的な《量の経済》から知識集約的な《質の経済》への転換が重要である。

読書案内
書名 沙漠化とその対策―乾燥地帯の環境問題
媒体 単行本
著者 赤木 祥彦
出版社と出版時期 東京大学出版会, 2005/01
[投稿者:Nagai Tosiya|コメント:2個|この記事をYahoo!ブックマークに登録する この記事を含むlivedoorクリップ この記事をFC2ブックマークに登録する この記事をニフティクリップに登録する この記事を含むはてなブックマーク この記事のはてなブックマーク数
ブログ内移動
カテゴリー内移動
コメント(2)

中東やアフリカの砂漠化の原因としては、原油のくみ上げも大きい原因ではないかと思います。 精製しガソリンなどに姿を変えて燃焼した量、ナフサの段階から化成製品に姿を変えた原油の量を地中に戻すことの研究も大事ですね。
温暖化で気象変化や、水戦争も騒がれていることですし、炭酸ガスを分解して水を大量且つ短時間で生み出す製法の確立が出来たら良いと思います。  

地球が温暖化して、二酸化炭素濃度が増えれば、降水量が増えて、光合成が促進されるので、地球の緑化にとっては、追い風になります。

コメントする
iGoogle または Google Reader に登録
MS WindowsLive に登録
日本語版ではなくて、英語版であることに注意してください
xFruits を用いた論文編と書籍編と総記編の統合フィード