不確定性の論理学
様相論理学に対する従来のアプローチは不十分である。本節では、確定性の二値論理学から不確定性の多値論理学(確率論的論理学)への移行に向けて、記号論理学の確率論への還元、即ち論理の数理への還元を試みる。
不確定性概念と論理学的厳密性は相いれないものではない。しかるに従来の記号論理学は原則として二値論理学であり、真と偽の間にある不確定性の領域を扱う多値論理学ではない。これまでの記号論理学を前提にして様相論理学を試みても、せいぜい3値論理学しか可能にならない(いやそれすら怪しい)のではないかと思われる。真と偽の間にある無限の値を扱おうとするならば、高階の様相記号を付け加える従来のやり方では不十分であり、一階の論理学を抜本的に改革する必要がある。
論理と数理をどう関係付けるかをめぐってこれまでに二つの立場があった。一つはブールに代表される、論理を数理の一部と考える論理代数学の立場で、もうひとつは、現在主流となっている記号論理学の立場、つまりフレーゲに代表される、数理を論理の一部と考える数学基礎論の立場であるが、数理と論理のどちらか一方によって他方を基礎付けるという課題に対しては、そのどちらも成功を収めていないというのが通説である。本節の試みは、立場としてはブール代数と同じであるが、その内容に関しては、以下が示すように、異なる展開となる<b>。
<b> ブ-ルは“かつ and”や“または or”を加法演算“+”に、“除く except”を減法演算“-”に対応させる。「もしxが人間を表し、yがアジア人、つまりアジアの人間を表しているとするならば、“アジア人を除く全ての人間”という概念は、x-yで表現される」[Boole: An Investigation of the Laws of Thought, p.34] 。しかし“アジア人を除く全ての人間”は“人間であってかつアジア人ではないもの”と解釈して、x(1-y)と表現されるべきである。また、“xまたはy”を“x+y”としては、xとyが排反事象でないときに問題が生じる。xの否定を“1-x”と表現すること以外ではブ-ルに同意できない。
命題は真理値を持つ。記号論理学(symbolic logic 象徴的論理学)では、しばしば真は1、偽は0で「象徴的」に表記される。この1と0をたんなる象徴(記号)としてではなく、確率を表現する数字として理解すること、これが確率論的論理学の出発点である。
命題が真であるということは、確率1で妥当するということであり、偽であるということは確率0で妥当するということである。そして0と1の両極限間にある無限個の真理値が、分数で表現されることとする。命題を命題結合子で合成した複合命題は要素命題の真理値を独立変数とした真理関数であるから、複合命題の真理値は要素命題の真理値から計算されるはずである。問題はその計算方法である。
著名なポーランドの論理学者、ルカシェウィッツは、すでに0と1の間に無限個ある確率を扱う多値論理学を提唱している。彼の立てた演算規則とその結果は表1のようなものである [Lukasiewicz: Philosophical Remarks on Many-valued Systems of Propositional Logic, p.166] 。
Cpq=1 (p≦qのとき)
Cpq=1-p+q (p>qのとき)
Np=1-p
| Cpq | q=0 | q=0.5 | q=1 | Np | q なし |
|---|---|---|---|---|---|
| p=0 | 1 | 1 | 1 | p=0 | 1 |
| p=0.5 | 0.5 | 1 | 1 | p=0.5 | 0.5 |
| p=1 | 0 | 0.5 | 1 | p=1 | 0 |
Cは条件(含意)を、Nは否定を表す。否定が1-pであるというのはいいとしても、条件の計算の仕方は不可解である。連言は条件と否定によって、 EKpqNCpNq つまり p∧q ⇔ ¬(p→¬q)と定義されるので、ルカシェウィッツの演算では、“pかつq”は
Kpq=0 (p≦1-qのとき)
Kpq=p+q-1(p>1-qのとき)
と定義されることになるが、これは積事象の確率計算ではない。ルカシェウィッツの失敗の原因は、確率計算が最も難しい条件(含意)の定義から始めたところにある。むしろ否定と連言あるいは選言を、余事象と積事象あるいは和事象の確率計算を用いてまず定義し、しかる後に条件や双条件をを定義すればよいのである。
かくして複合命題の真理値の計算の仕方は、次のようになる (p,q は、0≦p≦1,0≦q≦1 を満たす実数)。
(1) 否定 : ¬p = 1-p
(2) 連言 : p∧q = pq
(3) 選言 : p∨q = p+q-pq
(4) 条件 : p→q = 1-p+pq
(5) 双条件 : p⇔q = 2pq-p-q+1
なお表記法に関して、結合子を3つ以上用いるときの結び付きの強さをこの順とし、そうではないときにのみ括弧を用いることにする。
真理値の計算に際しては、(2)の連言に関してあらかじめ注意を喚起しておかなければならない。p∧pはp2であるが、p∧pとは要するにpと同じことである(反復律)。一般にいって、p∧p∧p∧p∧ =pn はpと同じであるから、
pn =p
p(pn-1-1)=0
p(p-1)(pn-2+pn-3+pn-4+ +1)=0
ということになり、pは0か1の値しか取れなくなってしまう。しかしここでは、ブールがそう考えたように<b>、「pn=p」をpの値を制約する式としてではなく、論理計算上の規約としておく。
「pn=p」は決して「さいころを1回投げて1の目が出る確率」=「さいころを2回投げて1の目が2回出る確率」=「さいころを3回投げて1の目が3回出る確率」 =1/6 ということを言っているわけではない。p∧pは「1回目に1が出る」かつ「1回目に1が出る」ということであり、たんに「1回目に1が出る」という命題と言っていることは変わらない。「1回目に1が出る」かつ「2回目に1が出る」は、同じ「1が出る」という事象の連言であっても、二つの事象は時空的に区別されうる試行の結果なのでp∧qと表記されるべきであり、p∧pと表現されるべきではない。このように考えれば、pn=pという約束は、確率論的多値論理学を禁止する規則ではないということが理解できる。
連言に関するもう一つの注意は、pとqが、確率0ではない排反事象であるとき、p∧qはpqではなく、0になるということである。(3),(4),(5)に現れる積pqの計算に関しても同様である。すなわち、
今、箱にりんご2つとみかん3つが入っているとする。箱から一つの個体を取り出すとき、それがりんごである確率は2/5であり、みかんである確率は3/5である。しかし「りんごかつみかん」である確率は、2/5×3/5=6/25ではなく、0である。もっとも「りんごかつみかん」の存在確率が0であることはアプリオリには判断不可能であって、バイオテクノロジーの発達に伴って「りんごかつみかん」がありふれた存在になる可能的世界を想像することはできる。ともあれ複数の事象が背反(同時に起こり得ない)かどうかは、経験的問題であって、そのつど考察するしかない。なお二値論理学の範囲内においては、p∧q=pqと計算して差し支えない。
この二つの点を予め断った上で、恒真式の証明を代数計算によって行うことしよう。恒真式とは、要素命題がいかなる真理値を取ったとしてもそれには係わらず、つまり分析的に真となる式のことである。恒真式の中でも基本的で活用範囲が広いものは、定理の名に値する。やや長くなるけれども、以下主な定理の証明を行う。
定理1(同一律): p⇔p
2p2-p-p+1=2p-2p+1=1
双条件(⇔)は、二つの命題が必要十分条件の関係にあることを示す結合子で、定理によく用いられる。この同一律の定理から、p⇔qという形式を取る定理を証明する時には、2pq-p-q+1を計算しなくても、左辺と右辺の等値(同形性)を示すだけでよいことが分かる。
定理2(矛盾律): ¬(p∧¬p)
1-p(1-p)=1-p+p2=1-p+p=1
定理3(排中律): p∨¬p
p+(1-p)-p(1-p)=1-2p+2p=1
定理4(二重否定律): ¬¬p ⇔ p
左辺=1-(1-p)=p
定理5(反復律): p∨p ⇔ p
左辺=p+p-p2=p
定理6(付加律): p → p∨q
1-p+p(p+q-pq)=1-p+p+pq-pq=1
定理7(簡約律): p∧q → p
1-pq+pq=1
定理8(結合律): p∨(q∨r)⇔(p∨q)∨r
左辺=p+(q+r-qr)-p(q+r-qr)=p+q+r-pq-qr-rp+pqr
右辺=(p+q-pq)+r-r(p+q-pq)=p+q+r-pq-qr-rp+pqr
定理9(結合律):(p⇔(q⇔r))⇔((p⇔q)⇔r)
左辺=p⇔(q⇔r)= 2p(2qr-q-r+1)-p-(2qr-q-r+1)+1=4pqr-2pq-2qr-2rp+p+q+r
右辺=(p⇔q)⇔r= 2r(2pq-p-q+1)-r-(2pq-p-q+1)+1=4pqr-2pq-2qr-2rp+p+q+r
定理10(分配律): p∧(q∨r)⇔(p∧q)∨(p∧r)
左辺=p(q+r-qr)=pq+pr-pqr
右辺=pq+pr-pq・pr=pq+pr-pqr
定理11(分配律): p∨(q∧r)⇔(p∨q)∧(p∨r)
左辺=p+qr-pqr
右辺=(p+q-pq)(p+r-pr)=p+pr-pr+pq+qr-pqr-pq-pqr+pqr=p+qr-pqr
定理12(移出入律):((p∧q)→ r)⇔(p→(q→r))
左辺=1-pq+pqr
右辺=1-p+p(1-q+qr)=1-pq+pqr
定理13(分離律):(p→q)∧p → q
1-p(1-p+pq)+pq(1-p+pq)=1-p+p-pq+pq-pq+pq=1
伝統的論理学では、定理13 は「肯定式 modus ponens」と呼ばれる。これとよく似た
(p→q)∧¬q→¬p
は「否定式 modusu tollens」と 呼ばれるが、この定理は次の定理と同趣旨である。
定理14(対偶律): p→q ⇔ ¬q→¬p
左辺=p→q=1-p+pq
右辺=¬q→¬p=1-(1-q)+(1-q)(1-p)=1-p+pq
定理15(対偶律):(p⇔q)⇔(¬p⇔¬q)
左辺=2pq-p-q+1
右辺=2(1-p)(1-q)-(1-p)-(1-q)+1=2pq-p-q+1
定理16(背理律): p∧(q∧¬q)→ ¬p
1-pq(1-q)+pq(1-p)(1-q)
=1-pq+pq+pq-pq-pq+pq=1
定理17(両刀律):(p→r)∧(q→r)⇔(p∨q→r)
左辺=(1-p+pr)(1-q+qr)=1-p-q+pq+qr+rp-pqr
右辺=1-(p+q-pq)+r(p+q-pq)=1-p-q+pq+qr+rp-pqr
定理18(連言の定義): p∧q ⇔ ¬(¬p∨¬q)
左辺=pq
右辺=1-{(1-p)+(1-q)-(1-p)(1-q)}=1-1+p-1+q+1-p-q+pq=pq
定理19(連言の定義): p∧q ⇔ ¬(p→¬q)
左辺=pq
右辺=1-{1-p+p(1-q)}=1-1+p-p+pq=pq
定理20(選言の定義): p∨q ⇔ ¬(¬p∧¬q)
左辺=p+q-pq
右辺=1-(1-p)(1-q)=1-1+p+q-pq=p+q-pq
定理18と定理20は、ド・モルガンの法則と呼ばれているものである。
定理21(選言の定義): p∨q ⇔ ¬p→q
左辺=p+q-pq
右辺=1-(1-p)+q(1-p)=1-1+p+q-pq=p+q-pq
定理22(条件の定義): p→q ⇔ ¬(p∧¬q)
左辺=1-p+pq
右辺=1-p(1-q)=1-p+pq
定理23(条件の定義): p→q ⇔ ¬p∨q
左辺=1-p+pq
右辺=1-p+q-q(1-p)=1-p+q-q+pq=1-p+pq
定理24(双条件の定義):(p⇔q)⇔(p→q)∧(q→p)
左辺=2pq-p-q+1
右辺=(1-p+pq)(1-q+pq)=1-q+pq-p+pq-pq+pq-pq+pq=2pq-p-q+1
以上の定理の証明は、もちろん従来の記号論理学が記号論理学なりの方法でやってきたのだから、別段画期的な意味があるわけではない。我々の代数的計算方法の意義は、2値論理の場合のみならず多値論理/様相 論理の場合も同じ演算方法でもって複合式を処理することができる点にある。従来の多値論理学/様相論理学は、例えば次のような問いに答えられたであろうか。
設問:要素命題p,q,rの様相をそれぞれ0.20,0.50,0.80とするとき、複合命題「もしpではないならばqまたはrのときかつその時のみ、qかつr」の様相を求めよ。
複合命題を“¬p→q∨r⇔q∧r”と理解すると、答えは次のようになる。
与式=2pr{1+(1-p)(q+r-qr-1)}-1-(1-p)(q+r-qr-1)-qr+1
=1-p-q-r+pq+pr+2qr-pqr
=1-0.2-0.5-0.8+0.1+0.16+0.8-0.08=0.48
次に命題論理学から述語論理学へ移行することしよう。述語論理学では、0階の個体と1階の普遍との関数関係が表現される。一つ以上の個体変項、例えばx,y,zがある関係(述語)P「xはyにzを与える」を持つ時、その事態は Pxyz と表記される。ちょうどこれまで命題記 号pを、その命題の確率を表す変数としても扱ったように、この Pxyzなどの記号も、以下、「xがyにzを与える」確率を表す変数としても使用する。確率 Pxyz は、論議領界における要素x,y,zが取りうる 可能的諸関係の総数を分母とし、Pxyz となる場合を分子とする分数で表される。だから Pxyz は、システムPがおこなう複雑性の縮減を表していると言ってよい。
述語論理学では、主語と述語の外延的包摂関係を表現するために量化子が導入される。
- Pxの変項xが普遍量化子によって束縛されると、その命題(∀x)Px は「全てのxはPである」と読まれる。その意味するところは、「論議領界におけるどのxを取ってみてもそれはP」ということであるから、確率論的論理学では、(∀x)Pxは「xがPである確率は1である」と解釈される。すなわち、(∀x)Px ⇔ Px=1
- Pxの変項xが 存在量化子によって束縛されると、その命題(∃x)Px は「あるxはPである」と読まれる。その意味するところは、「論議領界における少なくとも一つのxはP」ということであるから、確率論的論理学では、(∃x)Pxは「xがPである確率は0ではない」と解釈される。すなわち(∃x)Px ⇔ Px≠0
量化子と否定との組み合わせから次の定理が得られる。
定理25: ¬(∀x)Px ⇔(∃x)¬Px
左辺 ⇔ Px≠1
右辺 ⇔ 1-Px≠0 ⇔ Px≠1
定理26: ¬(∃x)Px ⇔(∀x)¬Px
左辺 ⇔ Px=0
右辺 ⇔ 1-Px=1 ⇔ Px=0
量化子と連言との組み合わせから次の定理が得られる。
定理27:(∀x)(Px∧Qx)⇔(∀x)Px∧(∀x)Qx
Px×Qx=1 → Px=1∧Qx=1
[∵ 0≦Px≦1∧0≦Qx≦1]
Px=1∧Qx=1 → Px×Qx=1
∴Px×Qx=1 ⇔ Px=1∧Qx=1
定理28:(∃x)(Px∧Qx)→(∃x)Px∧(∃x)Qx
Px×Qx≠0 → Px≠0∧Qx≠0
PxとQxが排反事象であるとき、
Px≠0∧Qx≠0→Px×Qx=0
となるので、逆は成り立たない。
量化子と選言との組み合わせから次の定理が得られる。
定理29:(∃x)Px∨(∃x)Qx ⇔(∃x)(Px∨Qx)
Px=0∧Qx=0 → Px+Qx-Px×Qx=0
Px+Qx-Px×Qx=0 → Px=0∧Qx=0
[∵ Px+Qx-Px×Qx=0 すなわち
Px(1-Qx)+Qx=0 の時、
Px≧0∧1-Qx≧0∧Qx≧0 であるから、
Px(1-Qx)=0∧Qx=0]
∴ Px=0∧Qx=0 ⇔ Px+Qx-Px×Qx=0
¬(∃x)Px∧¬(∃x)Qx ⇔ ¬(∃x)(Px∨Qx) 定理18より、
¬ (∃x)Px∨(∃x)Qx)⇔ ¬(∃x)(Px∨Qx) 定理15より、
(∃x)Px∨(∃x)Qx ⇔(∃x)(Px∨Qx)
定理30:(∀x)Px∨(∀x)Qx →(∀x)(Px∨Qx)
Px=1のとき、Px+Qx-Px×Qx=1-Qx+Qx=1
Qx=1のとき、Px+Qx-Px×Qx=Px+1-Px=1
この二つと定理17より、
Px=1∨Qx=1 → Px+Qx-Px×Qx=1
逆は成り立たない。なぜならば、例えば Px=0.5∧Qx=0.5
で両者が排反事象であるとき、
Px+Qx-Px×Qx=1 → ¬(Px=1∨Qx=1)
定理31:(∀x)(Px∨Qx)→(∀x)Px∨(∃x)Qx
Px≠1∧Qx=0 のとき、
Px+Qx-Px×Qx=Px+Qx(1-Px)≠1
¬(∀x)Px∧¬(∃x)Qx → ¬(∀x)(Px∨Qx) 定理18より、
¬ (∀x)(Px∨(∃x)Qx)→ ¬(∀x)(Px∨Qx) 定理14より、
(∀x)(Px∨Qx)→(∀x)Px∨(∃x)Qx
逆は成り立たない。例えば、Qx=0.5∧Px=0のとき、
Px+Qx-Px×Qx=0.5≠1
量化子と条件との組み合わせから次の定理が得られる。
定理32:(∃x)(Px→Qx)⇔(∀x)Px→(∃x)Qx
1-Px+Px×Qx≠0
Px(1-Qx)≠1
Px=1の時、1-Qx≠1
Qx≠0
∴ 1-Px+Px×Qx≠0∧Px=1→Qx≠1
定理12より、1-Px+Px×Qx≠0 →(Px=1→Qx≠1)
定理22より、Px=1→Qx≠1 ⇔ ¬(Px=1∧Qx=0)のとき
1-Px+Px×Qx≠1-1+1×0=0
∴(Px=1→Qx≠1)→ 1-Px+Px×Qx≠0
1-Px+Px×Qx≠0 ⇔ Px=1→Qx≠1
定理33: (∃x)(Px→(∀x)Qx)→(∀x)(Px→Qx)
定理23より、
Px≠0→Qx=1⇔ Px=0∨Qx=1
Px=0の時、1-Px+Px×Qx=1
Qx=1の時、1-Px+Px×Qx=1
この二つと定理17より、
Px=0∨Qx=1→1-Px+Px×Qx=1
逆は成り立たない。なぜなら、例えば Px=Qx=0.5 のとき Pxと1-Qxは排反事象で、Px(1-Qx)=0
∴ 1-Px+Px×Qx=1 → ¬(Px=0∨Qx=1)
⇔ ¬(Px≠0→Qx=1)
定理34: (∀x)(Px→(∀x)Qx)→(∃x)(Px→Qx)
1-Px+Px×Qx=0 → Px(1-Qx)=1
⇔ Px=1∧Qx=0 → Px=1∧Qx≠1
定理14より、¬(Px=1∧Qx≠1)→ 1-Px+Px×Qx≠0
定理19より、(Px=1→Qx=1)→ 1-Px+Px×Qx≠0
逆は成り立たない。1-Px+Px×Qx≠0のとき、
例えば Px=1∧Qx=0.5 であることが可能であるが、
その時、Px=1∧Qx≠1 ⇔ ¬(Px=1→Qx=1)
定理35: (∃x)(Px→(∃x)Qx)→(∃x)(Px→Qx)
1-Px+Px×Qx=0 → Px(1-Qx)=1
⇔ Px=1∧Qx=0 → Px≠0∧Qx=0
定理14より、¬(Px≠0∧Qx=0)→ 1-Px+Px×Qx≠0
定理19より、(Px≠0→Qx≠0)→1-Px+Px×Qx≠0
逆は成り立たない。1-Px+Px×Qx≠0のとき、
例えば Px=0.5∧Qx=0 であることが可能であるが、
その時、Px≠0∧Qx=0 ⇔ ¬(Px≠0→Qx≠0)
以上、単項述語のみを取り上げて述語論理学の展開を行った。では多項述語の場合はどう処理すればよいか。例えば、2項述語“Lxy”「xはyを愛する」を考えてみよう。xとyの論議領界を、それぞれ、あるパーティーに出席した少年と少女とする。量化子の組み合わせから、次の6つのケースを区別することができる。
(1) (∀x)(∀y)Lxy
“All the boys love all the girls.”
「全ての少年は全ての少女を愛する。」
(2) (∀x)(∃y)Lxy
“All the boys love some girls.”
「全ての少年はある少女を愛する。」
(3) (∃y)(∀x)Lxy
“Some girls are loved by all the boys.”
「全ての少年から愛される少女がいる。」
(4) (∀y)(∃x)Lxy
“All the girls are loved by some boys.”
「全ての少女はある少年から愛される。」
(5) (∃x)(∀y)Lxy
“Some boys love all the girls.”
「全ての少女を愛する少年がいる。」
(6) (∃x)(∃y)Lxy
“Some boys love some girls.”
「ある少女を愛する少年がいる。」
(2)と(3),あるいは(4)と(5)のように、存在量化子と普遍量化子の順序を替えると、命題の意味が変わるというのがフレ-ゲの『概念記法』以来の定説である。すなわち(2)は、気に入った少女がいない少年は一人もいないと言っているに過ぎないのに対して、(3)は全ての少年が愛するような人気のある少女の存在を主張している。だから(3)は(2)を含意するが、(2)は(3)を含意しない。同様に、(5)は(4)を含意するが、(4)は(5)を含意しない。
このような区別を設けることは恣意的であるようにも思えるのだが、あえて(1)から(6)までを、相互に区別がつくように、確率で表すと、以下のようになる。ただし、xとyは変数を、bとcはxに属する定数を、gとhはyに属する定数を表すとする。
(1) P(Lxy)=1
(2) P(Lxg)=1
(3) P(Lxg∧Lxh→(g⇔h))=1
(4) P(Lby)=1
(5) P(Lby∧Lcy→(b⇔c))=1
(6) 0<P(Lxy)<1
以上本節では、論理学の確率論への還元を試みた。システム論の中枢的な概念である《複雑性の縮減》も《複数の可能性の中からの選択》であるから、確率論的な概念である。本書では十分に展開できないけれども、確率論を中心にすれば、システム論の論理学を展開できるはずである。













