XHTMLでの引用方法
2001年5月31日に、W3C が XHTML1.1 の仕様を発表したものの、圧倒的なシェアを誇る Microsoft Internet Explorer がアップグレードを怠ってきたおかげで、ウェブマスターは、W3C の勧告を無視することができました。しかし、ここにきて、Mozilla Firefox がシェアを伸ばすなど、再びブラウザ戦争が起きそうな気配で、ウェブマスターたちも、新時代のマークアップ言語に無関心ではいられなくなりました。このコラムでは、現在のブラウザに対しても有効で、かつ、XHTML時代になっても時代遅れにならない引用のコードを手間をかけずに作成する方法を提案します。
1. 合法的な引用には何が必要か
本サイトでは、様々な所から無許可で引用をしていますが、日本の法律は、以下のように、無断引用の権利を認めています。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
「公正な慣行」というのは、あいまいな表現ですが、文化庁は、引用する際の具体的な注意事項を、次のようにまとめています。
(1)他人の著作物を引用する「必然性」があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,「自分の著作物」と「引用部分」とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との「主従関係」が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)「出所の明示」がなされていること。
この中で、ウェブマスターにとってテクニカルに問題になるのは、(2)の自分の著作物と引用部分との区別と(4)の出所の明示です。
2. 引用範囲の明示の仕方
アナログの世界では、短文の引用範囲は「」で区切り、長文の引用範囲はインデントで区切るのが普通で、ネットでもその慣例が踏襲されています。インラインレベルの引用には q 要素が使われ、引用範囲は自動的に引用符でくくられます(少なくとも、本来は)。ブロックレベルの引用には、blockquote 要素が使われ、引用範囲は自動的にインデントされます。
この二つの引用タグで、機械向けと人間向けの両方に対して引用範囲を明示しようと欲張った結果、q 要素は使用されず、blockquote 要素はインデントのために使われるという不本意な結果をもたらすことになりました。W3C は、見栄えと構造の分離を押し進めていますが、引用タグは、引用の構造だけを示すべきであって、何らかの見栄えを伴うものであってはいけないと思います。
構造を示す特定タグが特定の見栄えと結びついていると、いろいろと弊害があります。例えば、blockquote 要素で引用するものが文字情報だけなら、常にインデントでよいでしょう。しかし、引用しなければならないのは文字情報だけではありません。図や表も引用の対象となります。ですから、blockquote 要素をすべてインデントにするわけにはいきません。
そこで、CSSでは、blockquote のマージンとパディングをゼロにして(後述)、blockquote 要素を適用しても、見た目には何の変化もないように値を設定し、視覚的な境界の明示は、別途クラスを作るなどして行うべきです。
3. 出所の明示の仕方
本来、出所は、引用タグ内の《cite属性+title属性》で示すべきなのでしょうが、主流のブラウザが、 title 属性の方は、ツールチップの形で表示するものの、 cite 属性は無視するという現状を考えると、タグ内に《cite属性+title属性》を入れるだけでは、出所の「明示」としては不十分です。
もちろん、《cite属性+title属性》を「blockquoteの最下部にリンク表示してくれるクロスブラウザスクリプト
」 [Nobu:BROGUE: クロスブラウザ blockquote] などを使う手もありますが、JavaScript の作動をオフにしているサーファーもいるので、お薦めではありません。
そこで、機械向けには、《cite属性+title属性》で、人間向けには、cite 要素を用いて出所を「明示」するのが良いと思います。 title 属性の方は、ツールチップの形でしか表示されないという性質を利用して、「出所」には書ききれない詳細な情報を書き足すのに使えそうです。
例えば、blockquote の場合、次のようにコードを書くとよいでしょう。
<blockquote cite="URI" title="詳細情報">
<p>被引用箇所</p></blockquote>
<p>[<cite><a href="URI">出所</a></cite>]</p>
cite 要素を blockquote 要素の中に入れるべきか外に入れるべきかに関しては、論争があるようですが、cite 要素は、《引用に関する情報》であって、《引用される情報》ではない以上、blockquote 要素の中に入れるべきではありません。
外に置くと、引用された情報と出所情報の関係が不明確になるという人もいますが、XMLパーサのような機械向けには blockquote 要素内部にある《cite属性+title属性》で、人間向けには、cite 要素と blockquote 要素の物理的近さで、両者の関係は明確になります。
出所についての情報が、 cite 要素と q あるいは blockquote 要素内にある cite 属性+ title 属性とで重複しているため、無駄な感じがするかもしれません。しかし、出所を明示していないから罰せられるということはあっても、重複して表示したからといって罰せられることはないので、両方を書くようにしましょう。
もちろん、このようなコードを手書きで作成していては大変です。しかし、幸い、少し改造すれば、簡単に今提案したコードを自動作成してくれるフリーソフトがあります。ウェブサイトからの引用と書籍からの引用ではソフトが異なるので、項を分けて、解説しましょう。
4. ウェブから引用する方法
ウェブサイトから引用する時には、Noriyaさんが作った右クリック拡張ツール「楽々引用」がお薦めです。フリーウェアなので、ウェッブマスターの方は、是非ダウンロードしましょう。引用したい箇所を指定した後、右クリックし、「qで引用」を選んで、ソースコードにペイストすると、
<q cite="今見ているページのURL" title="今見ているページのタイトル">選択文字列</q>
「blockquoteで引用」を選んで、ペイストすると、
<blockquote cite="今見ているページのURL" title="今見ているページのタイトル"> <p>選択文字列</p> </blockquote> <p>(<cite><a href="今見ているページのURL">今見ているページのタイトル</a></cite> より引用)</p>
というコードを自動的に作ってくれます。
私の考えでは、このソフトは、次の三つの点で改良の余地があると思います。
- 参照文書にアクセスした日時が入っていない
- q 要素では、ブラウザが引用符を入れないことがある
- q 要素の方に cite 要素がない
A. 引用されたページは、後に書き換えられることもあるし、リンク切れになることもあります。リンク切れのページを Internet Archive とかで探す時、いつアクセスした時の文書なのかがわかると助かります。だから、学術論文などでは、ネット上のリソースから引用する時には、アクセスした年月日を入れることが推奨されています。
B. XHTML2.0のドラフト [XHTML 2.0] によると、W3Cは、新たに quote 要素を導入するようです。quote 要素は、 q 要素とは異なって、ブラウザが勝手に引用符を入れたり入れなかったりすることがありません。
Visual user agents must not by default add delimiting quotation marks (as was the case for the q element in earlier versions of XHTML). It is the responsibility of the document author to add any required quotation marks, either directly in the text, or via a stylesheet.
あくまでも推測ですが、おそらく将来、q 要素は廃止され、インライン引用は、次のように行うことが推奨されるでしょう。
「<quote cite="URI" title="出所">被引用文</quote>」
C. W3C が quote 要素を正式に導入しても、ブラウザが《cite属性+title属性》を明示することはないでしょうから、ここでも、blockquote の時と同様に、cite 要素で出典を併記したほうが安全です。
「<quote cite="URI" title="詳細情報">被引用文</quote>」 [<cite><a href="URI">出所</a></cite>]
まだ quote 要素が導入されていない現時点では、次のように引用するのが無難なようです。<quote>と</quote>は、もちろん、付ける必要はありませんが、付けておいた方が、将来新しい要素が出てきた時でも、容易に一括置換できそうです。
「<quote>被引用文</quote>」[<cite title="詳細情報"><a href="URI">出所</a></cite>]
blockquote と比べて、cite 要素に多くの情報が積み込まれることになりますが、「qで引用」は、それだけに、cite 要素を単独で使う場合の選択肢とすることもできます。つまり、ペイストした後、「被引用文」のところを削除すれば、引用なしの出典への言及(citation)ができるというわけです。
以上指摘した三つの点を改めるには、"RakuRakuInyou"フォルダ内にある"quote.html"と"blockquote.html"をテキストエディタで開いて、
の間にあるコードを、書き換えます。以下は、私がカスタマイズしたものです。なお、年月日は西洋式の順番になっています。
4.1. quote.htmlの改造案
<script type="text/javascript">
<!--
var obj;
var page_url;
var page_title;
var select_txt;
var quote;
obj = external.menuArguments;
myD = new Date();
page_url = obj.location.href;//今見ているページのURL
select_txt = obj.document.selection.createRange().text;//選択中のテキスト
page_title = obj.document.title;//今見ているページのタイトル
myYear = myD.getYear(); // 年
myMonth = myD.getMonth()+1; // 月
myDate = myD.getDate(); // 日
page_url = page_url.replace(/&/g,'&');
quote = '「<quote>' + select_txt + '<\/quote>」 [<cite title=\"Source: ' + page_title + '; Accessed Date: ' + myMonth + '/' + myDate + '/'+ myYear + '\"><a href=\"' + page_url + '\">' + page_title + '<\/a><\/cite>] ';
copyspace.area.value = copyspace.area.value + quote;
copytext = copyspace.area.createTextRange();
copytext.execCommand("Copy");
-->
</script>
生成したソースの例
「<quote>永井俊哉ドットコムは、専門の垣根を越えて、縦横無尽の知的冒険を行う学術系サイトです</quote>」 [<cite title="Source: サイト案内; Accessed Date: 2/6/2005"><a href="http://www.nagaitosiya.com/c/guidance.html">サイト案内</a></cite>]
生成した引用文
永井俊哉ドットコムは、専門の垣根を越えて、縦横無尽の知的冒険を行う学術系サイトです」 [サイト案内]
[サイト案内] 内にカーソルを持っていくと、詳細情報がツールチップとしてポップアップします。Firefox の場合、右クリックして「プロパティ」を選ぶと、cite属性とtitle属性の両方を見ることができます。
4.2. blockquote.htmlの改造案
<script type="text/javascript">
<!--
var obj;
var page_url;
var page_title;
var select_txt;
var blockquote;
obj = external.menuArguments;
myD = new Date();
page_url = obj.location.href;//今見ているページのURL
select_txt = obj.document.selection.createRange().text;//選択中のテキスト
page_title = obj.document.title;//今見ているページのタイトル
myYear = myD.getYear(); // 年
myMonth = myD.getMonth()+1; // 月
myDate = myD.getDate(); // 日
page_url = page_url.replace(/&/g,'&');
blockquote = '<blockquote cite=\"' + page_url + '\" title=\"Source: ' + page_title + '; Accessed Date: ' + myMonth + '/' + myDate + '/'+ myYear + '\" class="blockquote\"><p>' + select_txt + '<\/p><\/blockquote><div class="cite"> [<cite><a href=\"' + page_url + '\">' + page_title + '<\/a><\/cite>] <\/div>';
copyspace.area.value = copyspace.area.value + blockquote;
copytext = copyspace.area.createTextRange();
copytext.execCommand("Copy");
-->
</script>
生成したソースの例
<blockquote cite="http://www.nagaitosiya.com/c/guidance.html" title="Source: サイト案内; Accessed Date: 2/6/2005" class="blockquote"><p>永井俊哉ドットコムは、専門の垣根を越えて、縦横無尽の知的冒険を行う学術系サイトです。従来の定説に満足せず、新たな知的刺激を必要とする方、思索力を鍛えたい方、教養を幅広く求める方を歓迎します。</p></blockquote><div class="cite"> [<cite><a href="http://www.nagaitosiya.com/c/guidance.html">サイト案内</a></cite>] </div>
生成した引用文
永井俊哉ドットコムは、専門の垣根を越えて、縦横無尽の知的冒険を行う学術系サイトです。従来の定説に満足せず、新たな知的刺激を必要とする方、思索力を鍛えたい方、教養を幅広く求める方を歓迎します。
なお、CSSをどう決めるかは、趣味の問題ですが、参考までに私の設定を晒しておきます。
blockquote {
margin: 0px;
padding: 0px;
}
.blockquote {
margin-top: 20px;
margin-right: 20px;
margin-bottom: 0px;
margin-left: 20px;
padding: 10px;
border-style: dashed;
border-width: 1px;
border-color: #008000;
background: #ccffcc;
text-align: left;
}
cite {
margin: 0px;
padding: 0px;
font-style: normal;
}
.cite {
margin-top: 0px;
margin-right: 30px;
margin-bottom: 10px;
margin-left: 30px;
padding: 0px;
text-align: right;
}
5. 書籍から引用する方法
書籍から引用する時には、高橋亨平さんが製作したフリーウェアAmazon Appを通して、アマゾンジャパンの豊富なデータベースを活用するとよいでしょう。ただし、もともと Amazon App は、アマゾンにある商品を紹介するためのソフトなので、引用のために活用するには、雛形に手を加える必要があります。
そのためには、ダウンロードした後、html フォルダ内にある default フォルダを開き、Book をテキストエディタで開いて、例えば、次のように書き換えます。
<blockquote cite="%URL%" title="Source: %商品名%, p.; Author: %作者%; Publication Date: %発売日%; Publisher: %出版元%" class="blockquote">
<p> </p>
</blockquote>
<div class="cite">
[%作者%:<cite title="著者:%作者%;書名:%商品名%;出版年:%発売日%;出版社:%出版元%"><a href="%URL%">%商品名%</a></cite>]
洋書からも引用するときは、other ファイルに関しても同じ事をします。
次に、Amazon App を起動し、引用する本を探し、スキンが「デフォルト」になっていることを確認して、その本を右クリックして「コピー」を選びます。すると、例えば、次のようなソースを生成します。
<blockquote cite="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/
4921132860/n08-22/ref=nosim" title="Source: 縦横無尽の知的冒険, p.; Author: 永井 俊哉; Publication Date: 2003/07/15; Publisher: プレスプラン" class="blockquote">
<p> </p>
</blockquote>
<div class="cite">
[永井 俊哉:<cite title="著者:永井 俊哉;書名:縦横無尽の知的冒険;出版年:2003/07/15;出版社:プレスプラン"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/
4921132860/n08-22/ref=nosim">縦横無尽の知的冒険</a></cite>]
</div>
次に、<p>~</p>内に、引用する文章を書き、cite 属性内にページ数を書きます。
本書は、私が、一九九九年九月から現在に至るまで、メールマガジンジンで配信した一五四のエッセイのうち、理解しやすくて、かつ評価が高かった四〇本を選んで編んだ、いわば「本になったメルマガ」です。
インラインの引用は「題名のみ」のスキンを割り当てます。html フォルダ内にある text フォルダを開き、Book をテキストエディタで開いて、例えば、次のように書き換えます。
「<quote>被引用文</quote>」
<div class="cite">
[%作者%:<cite title="Source: %商品名%, p.; Author: %作者%; Publication Date: %発売日%; Publisher: %出版元%"><a href="%URL%">%商品名%</a></cite>]
</div>
御覧のように、《cite属性+title属性》では、かなり詳しい情報を書くことができます。本の場合、機械向けには、《cite属性+title属性》で厳密な引用を行い、人間向けには、cite 要素で、読者の利便性を優先した簡潔な引用をするというような差別化をすると有意義かもしれません。
引用の出所の明記は、著作権法対策だけのためにするわけではありません。読者の情報収集を手助けする役割もあります。ですから、私のサイトでは、前者では原書、後者では翻訳、あるいは、前者では参照した品切れの版、後者では現在入手可能な版、あるいは、前者では論文、後者ではそれを収めた論文集のタイトルを書くなどの役割分担をさせることにします。




