進行波の3Dグラフ化
進行波は位置と時刻を変数とする関数であるので、位置と時刻と変位の三つの軸からなる3Dグラフでその全貌を確認することができる。従来は、2Dグラフで説明されてきたが、3Dグラフで単振動の正弦曲線と進行波の正弦曲線の関係を理解してみよう。
1. 単振動の正弦曲線
進行波を理解するには、まず、その最も単純な要素的運動である単振動を理解しなければならない。単振動とは、ばねの伸び縮みの運動のような、中心からの変異に比例して復元力が働く時に見られる運動である。
今、おもりの質量を m [kg]、中心からの変位を y=f(t) [m] とおくと、復元力 F [N=kgm/s2] の運動方程式は、
と表される。k [kg/s2] は、ばねの場合、ばね定数と呼ばれる比例定数である。両辺を m で割ると、
となり、さらに、
と定義された ω [s-1] を導入すると、
と書き換えることができる。この微分方程式を解くことは、高校数学では、無理だが、
がこの式を満たすことは、高校生にでもわかる(この式をtで二回微分して、上記の微分方程式が成り立つことを確認せよ)。
結論だけを言うと、単振動の変位を時間を変数とする関数とみなすと、そのグラフは正弦波を描くということである。振幅 A [m] と初期位相 φ[rad] は、任意の実数であるが、A=1∧φ=0 とすると、単振動のグラフは、以下のようになる。

ωは、時間をラジアンに変換する角速度と解釈できる。その場合、単位を rad/s と表記することができる。rad/s×s=rad というわけだ。ラジアンは無次元数であるから、s-1 とするのが正しいのだが、ここでは、わかりやすさを優先して、rad/s とすることにしよう。
2. 進行波の2D正弦曲線
物体中の一粒子が単振動を始めると、その粒子と結合している粒子も、隣に引きずられて、単振動を始める。その結果、隣から隣へと、一定の時間差を伴って、単振動が伝播する。こうして、空間的に伝播する波動、進行波が発生する。進行波のわかりやすい例は、観客が単振動をすることでできるオーディエンス・ウェーブである。
このビデオからもわかるように、観客は、右の人が立ち上がれば、自分も立ち上がり、右の人が座れば、自分も座るという単純なルールに従って、上下に動いているだけであるが、遠くから見ると、そうした媒質の運動とは別に、波形が右から左へと動いているように見える。
これを念頭において、以下の図を見てみよう。
P0からP10までを人(Person)としよう。P0は、中位から出発して、1/4*T後に立ち上がり、3/4*T後に座る。右にいるP1は、P0よりも1/8*T遅れて、P0を模倣する。さらにその右にいるP2は、P1よりも1/8*T遅れて、つまり、P0よりも1/4*T遅れて、P0を模倣する。このように、Pnが、P0よりもn/8*T遅れて、P0を模倣することで、単振動が時間軸に沿って生み出す正弦曲線が、空間軸に表れる。
多くの教科書や参考書は、ここで引用したチャート式参考書のように、進行波を2Dのグラフで説明しようとするが、これだと、空間の関数である進行波のグラフと時間の関数である単振動のグラフとの関係を直観的に把握することが難しい。そこで、両者をまとめて概観できる3Dのグラフを作成して、正弦波の式を導いてみよう。
3. 進行波の3D正弦曲線
以下は、位置(x)と時刻(t)と変位(y)の関数、y=f(x,t)=sin(t-x) を、-3≦t≦3∧-3≦x≦3の値域でグラフ化したものである。
この図には、時点t=-3での波形と、それから6秒が経過した時点t=3での波形が、切断面に描かれている。二つの正弦波形とそれをつなぐ曲線を見れば、進行波が、時間の経過とともに、右に(つまりxの正の方向に)動いているのを見て取ることができる。他方で、x=3での切断面を見ると、媒質が、時間の経過とともに、単振動をして、正弦曲線を描いていることを確認することができる。
手前の点 (t,x,y)=(3,3,0) は、(t,x,y)=(0,0,0) が伝播したものである。その伝播の速さは、3秒間で3メートルであるから、1メートル毎秒である。逆に、速さがわかれば、x=0 におけるいつの時刻の変位であるかがわかる。
一般的に言って、x=0 における単振動の式を y=Asinωt とすると、地点(t1,x1) における変位y1は、
という式で求めることができる。この式は、原点からの距離(x1)を速さ(v)で割ることで、原点から伝播するのにかかった時間を求め、その時間の分、過去に遡って、その時点での原点における単振動の高さを算出する。
ところで、角速度ω[rad/s]は、次のように変形できる。
Tは周期で、一回転あたりの時間であるから、単位は[s/回]と書くことができる。また、一回転は、2πラジアンに相当するので、その単位は[rad/回]となり、これと周期の逆数をかければ、角速度の単位となることが理解できる。なお、これらの単位は、わかりやすさを重視して私が考案したものだから、高校生諸君は、答案用紙にこの単位を書いてはいけない。
この式を式006に代入すると、
となる。進行波の速さv[m/s]と周期[s/回]をかけると、一回転あたりに進む進行波の距離、すなわち波長λ[m/回]となる
ので、これを代入すると、式008は、
と表すことができる。サインの変数の単位は、
であるから、最終的には、ラジアンとなることがわかる。
進行波を、y軸の正の方向に D[m]移動させ、t軸の正の方向にθ[rad]移動させると、基本式(式011)は、
となる。これは、進行波の最も一般的な式である。
4. さまざまな進行波
これまで、A=1∧T=λ=2π∧θ=D=0 で描画したが、進行波の式における変数を変えることで、正弦波がどのように変化するかを次に見てみよう。
まず、速度 v=λ/T をマイナスにしてみよう。先ほどの3Dグラフ、f(x,t)=sin(t-x) は、f(x,t)=sin(t+x) になる。すると、進行波は、x軸を負の方向(右から左の方向)に動く。
二つの変数tとxの係数を2と3にすると、つまり、周期を1/2にし、波長を1/3にすると、以下のように、波の数が増える。
次に振幅を2倍にしてみた。
初期位相を-1、定数項を1とすると、グラフは次のようになる。
2t+3x-1は、2(t-1/2)+3xと解釈することもできれば、2t-3(x-1/3)と解釈することもできる。つまり、t軸の正の方向に1/2動かしたとも、x軸の正の方向に1/3動かしたとも解釈できる。















